ビタミンは、犬の体にとって欠かせない栄養素です。
ビタミンは脂溶性のビタミン、水溶性のビタミンに分けられ、犬の体内で生理機能の調整など様々な重要な働きをしています。
生命維持や、成長、繁殖などに必須な栄養素です。
その摂取量は微量ですが、体内で作られることができないか、作られても必要量を満たさないものとして定義されています。
このページでは、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分け、それぞれ犬にとって必要量と共に、それぞれの機能や働き、不足した場合、過剰摂取した場合などに起こる問題などをご紹介します。
必要量は、総合栄養食の基準として使用されるAAFCO(米国飼料検査官協会)の2015年改訂版の栄養基準と、AAFCOにて栄養基準ができる前に唯一の栄養基準とされていたNRC(米国国家研究協議会)による2006年改訂版の推奨量をご紹介しています。
それでは、犬に体に必要なビタミンをそれぞれ見ていきましょう!
脂溶性のビタミン
脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンKの4種類が該当し、その名の通り、油脂に溶けやすいビタミンの事を言います。
脂溶性ビタミンは、脂質との関係が深く、脂肪に溶け込んで体内を移動して肝臓などの脂肪組織に蓄積されます。
そのため、肝臓の機能障害によって脂質の吸収率が低下すると市旺盛ビタミンの吸収も抑制されてしまいます。
健康であれば、一時的に不足が起きたとしても、蓄積ビタミンを利用することができ、欠乏しませんが長期間の摂取不足は蓄積分を消費してしまい欠乏症が生じてしまいます。
かといって、たくさん摂れば良いかというと、蓄積される分過剰摂取をすると中毒症状を起こしてしまうので注意が必要です。
それでは、脂溶性のビタミン4つについて、それぞの働きや欠乏した際の問題等を見ていきましょう。
ビタミンA(レチノール)
ビタミンAは、乳脂(牛乳)、肝油、卵黄、肝臓などに含まれます。
ドッグフードに添加物として添加されている場合は、「レチニルエステル」が用いられます。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
5,000~250,000 IU/kg |
5,000~250,000 IU/kg |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(ME)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
379RE | 3,750μg | 379RE | 16,000μg | 379RE | 3,750μg |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
※推奨量はレチノール当量で表記(1REは1μgのレチノールに相当)、上限値はレチノール量で表記しています。
犬におけるビタミンAの機能とは?
ビタミンAは、目、毛、皮膚、粘膜、歯の健康に重要な栄養素です。
生物学的性質として、ビタミンAは下記のような機能があります。
- 成長促進作用
- 抗眼乾燥症
- 細菌に対する抵抗力増強作用
- 視覚・粘膜機能維持
- 皮膚の健康
- 細胞分化、細胞機能維持
- 骨代謝維持
- 抗酸化作用
ビタミンAが不足(欠乏)するとどうなる?
犬がビタミンA不足に陥るとどのような症状がでるのでしょうか?
- 夜盲症
- 成長率低下
- 眼球乾燥症
- 網膜の変性
- 皮膚障害や被毛に色つや、毛並みなどの劣化(粗毛)
- 強骨度低下
- 免疫機能低下(抵抗力の低下)
- 食欲不振や体重減少
ビタミンAを過剰摂取するとどうなる?
脂溶性のビタミンは、肝臓などの脂肪組織に蓄積されるため、過剰摂取をすると中毒症状を起こしてしまいます。
犬がビタミンAを過剰摂取した場合、どのような症状がでるのでしょうか?
- 食欲不振
- 成長率低下
- 骨の異常(骨の脱カルシウム)
- 関節炎
- 体重減少
- 強骨度低下・骨の異常
- 免疫機能低下(抵抗力の低下)
- 食欲不振や体重減少
ビタミンD(カルシフェロール)
ビタミンDは、乳脂(牛乳)、肝油、卵黄、魚類、干し椎茸、天日乾燥の乾草などに含まれます。
消化管でカルシウムとリンを吸収させ骨の健康を保つ働きがあります。
ビタミンDは人間の場合、日光浴などで短波長の紫外線によってビタミンD3を皮膚から合成することができますが、犬の場合はビタミンDの元となるプレビタミンD3の濃度が皮膚中に少なく、皮膚からのビタミンD3の合成量が少なくなります。
そのため、ドッグフードなどの食べ物からビタミンDを摂る必要があります。
ドッグフードに添加されたビタミンDは時間とともに減少してしまうため、決められた賞味期限を守るようにしましょう。
ビタミンDは、ビタミンAと同じく、過剰となると深刻な問題になるため、米国飼料検査官協会「AAFCO(アフコ)」と米国国家研究協議会「NRC」ともに、上限値が決められています。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
500~3,000 IU/kg |
500~3,000 IU/kg |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
3.4μg | 20μg | 3.4μg | 20μg | 3.4μg | 20μg |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
※コレカルシフェロール量で表記されています。(1μgのコレカルシフェロールは40IUビタミンD)
犬におけるビタミンDの機能とは?
ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収と深く関係しており、主に骨の健康に重要な栄養です。
骨の健康にはカルシウムとリンが必要ですが、それをしっかりと吸着させるにはビタミンDが必要です。
骨んの健康にはカルシウム・リン・ビタミンDが揃っていることが大切なのですね。
- カルシウム・リンの吸収促進
- 骨からのミネラス溶出
- 骨、歯の成長促進
- 副甲状腺機能維持
- 抗くる病(骨の成長障害や骨格や軟骨部の変形が起こる病気)作用
ビタミンDが不足(欠乏)するとどうなる?
犬がビタミンD不足に陥るとどのような症状がでるのでしょうか?
ビタミンDが不足すると、カルシウムや、リンの吸収低下が起こり、成長中の犬では骨の成長障害や骨格や軟骨部の変形が起こる病気である「くる病」を発症します。
- くる病
- 骨軟症
- 低カルシウム血症
- 副甲状腺機能亢進症
- 下半身麻痺
- 運動失調
- 骨粗鬆症
ビタミンDを過剰摂取するとどうなる?
ビタミンDはドッグフードに含まれる含有量の下限〜上限が決められています。
過剰に摂取してしまうと、重篤な疾患である高カルシウム血症、心臓などでのカルシウム異常沈着が生じてしまい、亡くなってしまうこともあります。
- 食欲不振
- 嘔吐
- 脱力感
- カルシウム沈着
- 下痢
- 腎障害
- 死
ビタミンE(トコフェロール)
ビタミンEは、緑黄色野菜、小麦胚芽、植物油、乾草、魚類、糖蜜、米糖などに含まれます。
主に抗酸化作用や、細胞膜の健康に影響する栄養素です。
活性酸素や過酸化物よる酸化から細胞(生体膜)を守っています。
体内でビタミンEが消費されると、ビタミンEはビタミンEラジカルという物質に変わってしまいますが、同じ抗酸化作用を持つとして有名なビタミンC(水溶性ビタミン)は、このビタミンEラジカルに変わってしまったものをビタミンEに戻す作用があるそうです。
様々な栄養素がからまり、体の機能を守ってくれているのですね。いかに「栄養バランス」が大切であるかがわかります。
また犬のための栄養としてだけでなく、ドッグフードそのものの酸化を防ぐための天然の防腐剤としても添加されています。
添加物としては、α-トコフェロールやその他酢酸エステルが利用されます。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
50 IU/kg以上 |
50 IU/kg以上 |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
7.5mg | – | 7.5mg | – | 7.5mg | – |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
※α-トコフェロール量で表記されています。多価不飽和脂肪酸(魚油の場合はフード1kg当たり1g増加するにつれて10IUのビタミンEが余分に必要になります。)が多い場合は量が増加。
犬におけるビタミンEの機能とは?
ビタミンEは、抗酸化作用を持つ物質で、活性酸素や過酸化物質から細胞膜を守っています。
具体的なビタミンEが持つ機能はどんなものがあるのでしょうか?
- 老化の防止
- 細胞膜の健全化
- 抗酸化作用
- 生殖腺・筋肉・神経系機能維持
ビタミンEが不足(欠乏)するとどうなる?
犬がビタミンE不足に陥るとどのような症状がでるのでしょうか?
ビタミンEが欠乏してしまうと、様々な機能障害が発生します。
- 生殖能力の低下(精子形成障害・繁殖障害など)
- 骨格筋の機能障害(退行性骨格筋疾患)
- 免疫系の機能障害
- 肝臓壊死などの肝臓トラブル
- 筋萎縮
- 脂褐素症(腸管平滑筋の色素沈着)
ビタミンEを過剰摂取するとどうなる?
これまでに見てきた、ビタミンAと、ビタミンDについては過剰に摂取すると中毒症状が起こったり、体への影響があることから下限値とともに上限値も設定されていましたが、ビタミンEに関しては、過剰摂取における毒性については低いとされており、明確な過剰症は見当たりません。
- なし
ビタミンK(フィロキノン)
ビタミンKは、緑黄色野菜、納豆、肝臓、魚粉、卵黄、小麦胚芽、種実、アルファルファなどに含まれます。
添加物としては、合成されたビタミンK3(メナジオン)が使用されます。
ビタミンK3は体内でビタミンK2に代謝されて栄養素として作用します。
犬の場合、ビタミンK2は消化管内で合成されるので、ビタミンKを添加する必要はありません。そのため、AAFCOの栄養基準には、ビタミンKの項目はありません。
AAFCOの栄養基準には項目はありませんが、NRCでは推奨量が定められています。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
項目なし |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
0.41mg | – | 0.41mg | – | 0.41mg | – |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
※ビタミンK3量にて表記されています。
犬におけるビタミンKの機能とは?
ビタミンKは、血液凝固因子の合成に欠かせない栄養素で、主に出血を抑える役目を果たしています。
ビタミンKに依存するたんぱく質があり、このたんぱく質は骨の代謝や、細胞増殖を調整しているため、骨の健康や細胞の健康に必要な栄養素です。
- 血液凝固因子の機能維持(出血を抑える)
- 骨の健康(骨代謝機能維持)
- 細胞増殖
- 抗貧血作用
ビタミンKが不足(欠乏)するとどうなる?
犬がビタミンK不足に陥るとどのような症状がでるのでしょうか?
ビタミンKが欠乏してしまうと、主に出血に関する問題が発生します。
セフェム系抗生物質などのビタミンKの合成を抑制するような薬剤を服用している場合はビタミンKが不足してしまいます。
- 血液凝固不全(血が固まるまでの時間が遅くなるなど)
- 出血しやすくなる
- 打撲等で内出血になりやすくなる
- 低トロンビン血症
- 繁殖障害
ビタミンKを過剰摂取するとどうなる?
ビタミンKも、ビタミンEと同じく、過剰摂取による過剰症は明確ではありません。
AAFCO、NRCともに、上限値は決められていませんが、天然のビタミンK1、体内で合成されるビタミンK2の毒性は低いとされるものの、合成品であるビタミンK3は過剰摂取すると問題が生じるとされています。
人間の場合、ビタミンK3は人体に悪影響を与えるため使用が中止されています。
- 貧血
- 黄疸
以上、脂溶性のビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4をご紹介しました。
ビタミンA、ビタミンDについては、AAFCO、NRC共に摂取量の上限値が定められており、過剰摂取による問題が生じますので、手作りドッグフードなどで給与する場合はぜひ気をつけたいものです。
ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEに関しては、足りない分をドッグフードなどから給与する必要がありますが、ビタミンKについては体内で合成できるため、AAFCOでは栄養基準に含まれていません。
それでは、次に、犬に必要な栄養素として定められているビタミンのうち、水溶性のビタミンを見ていきましょう。
水溶性のビタミン
水溶性のビタミンは主にビタミンB群があり、ビタミンCも水溶性のビタミンです。
ビタミンCは人間界では美白などの美容に良いとされており、積極的に摂取する機会も多いのですが、犬の場合、必要なビタミンCは体内で合成されるので、あえて食事に添加したり、含有量に配慮する必要がないため、ドッグフードの栄養基準(AAFCO栄養基準)にもNRC(米国国家研究協議会)が定める推奨量にも項目としてありません。
ビタミンCを取ることは犬にとっても悪いことではありませんが、サプリメントなどから継続して過剰摂取するとシュウ酸カルシウム尿石症を引き起こすことがあるため、ビタミンCをサプリメント等で犬に与えるときには、獣医師さんやペット栄養士に相談の上行いましょう。
水溶性のビタミンは、脂溶性ビタミンと異なり大部分が腎臓から排泄されてしまうので、体内での蓄積量が少なくなります。
そのため、日々ドッグフードなどからバランス良く補給する必要があります。
それでは、ドッグフードの栄養基準(AAFCO栄養基準)にもNRC(米国国家研究協議会)にて定められている犬における水溶性ビタミンのそれぞれの機能などをご紹介していきます。
ビタミンB1(チアミン・アノイリン)
犬にとってのビタミンB1は、中枢神経や末梢神経の機能を正常に保つ働きがあります。
糖質の代謝に関わっており、エネルギーを産生するために欠かせないビタミンです。
糖質だけを摂取しても、ビタミンB1がなければエネルギーに変換されず、不足すると体内のエネルギー量が足りなくなってしまうため重要な栄養素です。
主に穀類、米ぬか、麩、酵母、肝臓(特にブタ肝臓)、大豆、小麦胚芽、緑黄色野菜などに含まれます。
ビタミンB1は加工の過程で90%程度まで分解されると考えられており、ドッグフードにはチアミン塩酸や、チアミン硝酸が添加物として使用されます。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
2.25 mg/kg以上 |
2.25 mg/kg以上 |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
0.34mg | – | 0.56mg | – | 0.56mg | – |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
※ビタミンK3量にて表記されています。
犬におけるビタミンB1の機能とは?
ビタミンB1は、主に糖質がエネルギーに変換されるための代謝に関わっており、エネルギーが作られるための必要な栄養素です。
その他、中枢神経や末梢神経の機能を正常に保つ働きがあります。
ドッグフードの加工の過程で食品に含まれるビタミンB1は分解されてしまうため、必要な栄養基準を満たすために添加される栄養素でもあります。
- 糖質代謝
- 抗神経炎(神経機能の正常化)
- アセチルコリン合成
ビタミンB1が不足(欠乏)するとどうなる?
ビタミンB1が欠乏してしまう原因の中には、単なる摂取不足だけでなく、抗ビタミンB1因子であるチアミナーゼという物質によるものがあります。
チアミナーゼはビタミンB1の不活性化を引き起こしてしまい、結果ビタミンB1の欠乏となります。
主に貝類や淡水魚の体内にチアミナーゼは存在し、生で犬に食べさせてしまうとふらつき、痙攣などの神経症状を引き起こすことがあります。
生では食べさせないようにしましょう。(イカ、タコ、エビなども同様)
上記神経症状など、犬がビタミンB1不足に陥るとどのような症状がでるのでしょうか?
- 体重減少
- 食欲減退
- 突発性神経炎などの神経炎
- 痙攣
- 脚気
- 浮腫
- 心臓肥大
- 四股の失調
ビタミンB1を過剰摂取するとどうなる?
ビタミンB1を過剰摂取した場合に起こる問題はありません。
- なし
ビタミンB2(リボフラビン・ラクトフラビン)
ビタミンB2もビタミンB1と同じく、エネルギー代謝に欠かせないビタミンです。
ビタミンB1は、糖質からエネルギーを産生するのに必要なビタミンでしたが、ビタミンB2は脂質からエネルギーを産生する際に必要なビタミンです。
また、酵素の働きを助けるための酵素(補酵素)の元となる物質でもあるた、生命活動に欠かせない栄養素です。
ビタミンB2は、乳製品、内臓、筋肉、卵、緑黄色野菜、酵母、脱脂乳、油かす類に含まれます。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
5.2 mg/kg以上 |
5.2 mg/kg以上 |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
1.32mg | – | 1.3mg | – | 1.3mg | – |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
犬におけるビタミンB2の機能とは?
ビタミンB2は、主に脂肪がエネルギーに変換されるための代謝に関わっており、エネルギーが作られるための必要な栄養素であり、酵素の働きを助ける生命活動に欠かせない栄養素です。
- 生殖
- 成長
- 呼吸促進作用
- エネルギー代謝
- 皮膚・角膜維持
- 髄鞘維持(神経細胞の軸索を何重にも取り囲んでいる密な膜構造)
ビタミンB2が不足(欠乏)するとどうなる?
ビタミンB2が不足してしまうと、どのようなことが犬の体に起こるのでしょうか?
水溶性のビタミンであるビタミンB2はたくさん摂取してもほとんどが排泄されてしまいます。
毎日の食事で不足しないように補ってあげる必要があります。
- 皮膚炎
- 白内障
- 繁殖障害
- 体重減少
- 食欲不振
- 成長率低下
- 脂肪肝
- 貧血
- 運動失調
ビタミンB2を過剰摂取するとどうなる?
ビタミンB2を過剰摂取した場合に起こる問題はありません。
- なし
ビタミンB6(ピリドキシン・ピリドキサール・ピリドキサミン)
ビタミンB6は主にたんぱく質(アミノ酸)・脂質の代謝に必要な栄養素です。
およそ100種類もの単体ではうまく機能することができない酵素の働きを助ける「補酵素」として働くビタミンです。
アミノ酸の代謝に深く関わっていて、アミノ酸の代謝に必要な酵素の補酵素としての働きがあります。
ビタミンB6は、食肉、肝臓、牛乳、イワシ、全粒穀類、緑黄色野菜、酵母、油粕などに多く含まれています。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
1.5 mg/kg以上 |
1.5 mg/kg以上 |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
0.375mg | – | 0.375mg | – | 0.375mg | – |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
犬におけるビタミンB6の機能とは?
ビタミンB6の主な働きとして、多数のアミノ酸が結合しているたんぱく質を分解し再合成するために必要な酵素として、その他アミノ酸が体内で利用されやすいよう働く酵素を助ける補酵素としての働きがあります。
また、脳の神経細胞の間で情報の橋渡しをしている神経伝達物質の合成にも関わりがあり、セロトニン、ドーパミン、アドレナリンなどの神経伝達物質が合成される際のアミノ酸の代謝を助けていたりもします。
人間では精神状態の安定にも役立つ栄養素として有名ですよね。
- 補酵素としての働き
- 抗皮膚炎作用
- アミノ酸代謝(たんぱく質代謝)
- 脂質の代謝
- 神経伝達物質合成
- 皮膚の健康
- 神経の健康
ビタミンB6が不足(欠乏)するとどうなる?
ビタミンB6が不足してしまうと、どのようなことが犬の体に起こるのでしょうか?
- 神経障害・神経症状(過剰刺激感受性や発作)
- 貧血(軽度)
- 筋肉の脆弱化
- 成長不良(成長率低下)
- 食欲不振
- 体重減少
ビタミンB6を過剰摂取するとどうなる?
ビタミンB6は水溶性ビタミンのため、過剰に摂取された分はすべて排泄されるので、過剰摂取した場合に起こる問題はほとんどありませんがごく稀に下記のような症状が起こります。
- 筋肉の脆弱化
- 平均感覚欠如
- 運動失調
ナイアシン(ニコチン酸・ニコチンアミド・ビタミンB3)
ナイアシンはニコチン酸とニコチンアミドの総称で、ニコチン酸、ビタミンB3と記載されることも多い熱に強いビタミンです。
人間も含め、動物は、必須アミノ酸のトリプトファンからナイアシンを体内で合成することができ、これをナイアシン(猫の場合は分解が早くトリプトファンをナイアシン前駆物質として利用できない)として活用しています。
エネルギーを作ったり、脂質、たんぱく質の代謝に必要なビタミンで、循環系、消化系、神経系の働きを促進するなどの働きがあります。
ナイアシンは、酵母、製造粕類、豆類、カツオの肝臓、マグロの肝臓、魚粉、卵などに含まれています。
天然原料に含まれるナイアシンは利用性が低く、小麦に含まれるナイアシンは70%、油粕中のナイアシンの40%は利用できないと言われていますが、体内でトリプトファンから合成されるナイアシンだけでは1日の要求量が満たされないため、ドッグフードなどからナイアシンを摂取する必要があります。
犬における水溶性ビタミンの中で、ドッグフードにおけるAAFCOの栄養基準では後にご紹介する「コリン」に次いで2番目に多くなっています。
ナイアシンは、犬で発症した「黒舌病(舌が褐色,黒色を呈する疾患)」がナイアシンの補給によって治癒したことがきっかけで、ビタミンとして認知されるようになりました。
ペラグラや黒舌病はニコチン酸欠乏症として有名です。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
13.6 mg/kg以上 |
13.6 mg/kg以上 |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
4.25mg | – | 4.25mg | – | 4.25mg | – |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
犬におけるナイアシンの機能とは?
ナイアシンは、エネルギーを作ったり、ビタミンB2と同じく、およそ400種類の酵素の働きを助ける補酵素として多くの働きを担っています。
- エネルギー代謝
- 脂肪合成
- 酸化還元の触媒
- 抗皮膚炎
- 抗ペラグラ
- 抗黒舌病
- 糖質・脂質の代謝
- 脳神経の正常化
ナイアシンが不足(欠乏)するとどうなる?
ナイアシン(ビタミンB3)が不足してしまうと、どのようなことが犬の体に起こるのでしょうか?
- ペラグラ
- 黒舌病
- 皮膚炎
- 下痢
- 中枢神経異常
- 食欲不振
- 成長遅延
ナイアシンを過剰摂取するとどうなる?
ナイアシン(ビタミンB3)は水溶性ビタミンのため、過剰に摂取された分はすべて排泄されるので、過剰摂取した場合に起こる問題はほとんどありません。
ですが、ナイアシンの場合ごく稀に下記のような症状が起こります。
- 血管拡張
- 瘙痒感(そうようかん)
パントテン酸(ビタミンB5)
パントテン酸はあまり聞きなれないビタミンですよね。
名前こそ聞きませんが、パントテン酸は動物に必須の栄養素で、ビタミンB5とも呼ばれていました。
酵素の働きを助ける、生物にとって極めて重要とされる補酵素である「補酵素A(コエンザイムA)」の構成成分で、糖代謝や脂肪酸代謝に重要な物質です。
また、コレステロール、ホルモン、免疫抗体などの合成にも関係しています。
wikipediaによると、語源はギリシャ語で、「どこにでもある酸」という意味で、食品中に広く存在し、通常の食生活を送る上で不足になることはあまりないためこのような名前がついたそうです。
「どこにでもある」と言われるように、天然に広く分布していて、食肉(肝臓や心臓)、米、ふすま、アルファルファ、ナッツ、大豆、酵母、魚粉、糖蜜、米ぬか、麩、乳製品、卵などに含まれます。
ドッグフードの原材料となる、大豆やトウモロコシに含まれるパントテン酸の吸収性は高く、麦類に含まれるパントテン酸の吸収性は少し低く60%程度です。
添加物としては、「パントテン酸カルシウム」が使用されます。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
12 mg/kg以上 |
12 mg/kg以上 |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
3.75mg | – | 3.75mg | – | 3.75mg | – |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
犬におけるパントテン酸の機能とは?
パントテン酸は、補酵素Aの構成因子であることから、単体で何かをする、というよりかは、パントテン酸を含む複合体である補酵素Aによって、糖質・脂質・アミノ酸などの代謝が行われています。
食品やドッグフードでは、補酵素A(コエンザイムA、CoA)としてパントテン酸が存在していて、その後消化管でパントテン酸にまで消化されたのち、体内に取り込まれます。
- コエンザイムAの構成因子
- 糖質・脂質・アミノ酸(たんぱく質)の代謝
パントテン酸が不足(欠乏)するとどうなる?
パントテン酸が不足してしまうと、どのようなことが犬の体に起こるのでしょうか?
- 脂肪肝
- 低コレステロール血症
- 抗体反応低下
- 成長率低下
- 突然の昏睡
- 皮膚炎
- 衰弱
- 食欲不振
パントテン酸を過剰摂取するとどうなる?
パントテン酸は水溶性ビタミンのため、過剰に摂取された分はすべて排泄されるので、過剰摂取した場合に起こる問題はほとんどありません。
- なし
葉酸(プテロイルグルタミン酸・ビタミンM・ビタミンB9)
出産経験のある方なら、葉酸を耳にしたことがあるかもしれません。
妊娠中に適正値の葉酸を摂取することで、二分脊椎症などの神経管閉鎖障害の発症リスクが減ることが研究でわかったため、葉酸の摂取を医療機関を通して葉酸を積極的に摂取するように指導されるようになりました。
葉酸はプテロイルグルタミン酸・ビタミンM・ビタミンB9などとも呼ばれ、造血にかかわる因子として発見され、DNAやアミノ酸の合成にも関与しています。
補酵素として新しい細胞に生まれ変わるときに必須の物質である「核酸」の合成・分解やアミノ酸代謝などに関与しています。
また、ビタミンB12とともに、必須アミノ酸であるメチオニンの合成にも寄与しています。
葉酸は肝臓、卵黄、緑黄色野菜、小麦などに多く含まれています。
残念ながらドッグフードに上記食品が含まれていてもドッグフードの加工時や保存時に葉酸は分解されてしまいます。天然の葉酸では安定しないということですね。
このため、葉酸は栄養基準を満たすドッグフードでは添加物として添加されています。
体内で蓄積できないため、毎日摂取することが必要な栄養素です。
葉酸はドッグフードの中ではグルタミン酸として存在していて、その後消化管で「モノグルタミン酸」という葉酸に変化してとして、体内に取り込まれます。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
0.216 mg/kg以上 |
0.216 mg/kg以上 |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
68μg | – | 67.5μg | – | 67.5μg | – |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
犬における葉酸の機能とは?
- 核タンパク質の代謝
- 抗悪性貧血作用
- 核酸・アミノ酸代謝
- 造血(赤血球の形成)
- DNAの合成
葉酸が不足(欠乏)するとどうなる?
葉酸が不足してしまうと、どのようなことが犬の体に起こるのでしょうか?
- 悪性貧血
- 白血球減少
- 舌炎
- 食欲不振
- 成長不良
- 口蓋裂
葉酸を過剰摂取するとどうなる?
葉酸を過剰摂取した場合に起こる問題はありません。
- なし
ビタミンB12(コバラミン・シアノコバラミン)
ビタミンB12は、悪性の貧血に有効とされており、赤血球の形成(造血)や神経の修復に欠かせない因子のひとつです。
動脈硬化の危険因子といわれるホモシステインの血中濃度を正常化する作用や、葉酸から必須アミノ酸であるメチオニンを合成する際に補酵素として活躍しています。
動物は体内でビタミンB12を合成できないため、食品から摂取する必要があり、主に酵母や微生物由来のビタミンB12を含む肉製品や、魚介類が主な給源となります。
ドッグフード中のビタミンB12はたんぱく質と結合していて、消化管で胃酸や消化酵素の作用によって分解され、結合を繰り返すなどして体内に吸収されます。
ドッグフードでは、添加物としてシアノコバラミンが使用されます。
米国飼料検査官協会「AAFCO(アフコ)」の栄養基準では、最低値が設定されていますが、幼犬・成犬ともに、0.028mg/kgと、その要求量は微量です。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
0.028 mg/kg以上 |
0.028 mg/kg以上 |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
8.75μg | – | 8.75μg | – | 8.75μg | – |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
犬におけるビタミンB12の機能とは?
- 核酸代謝
- アミノ酸代謝
- 脂質代謝
- 葉酸活性化
- 赤血球造血作用造血
- タンパク質合成作用
- 神経機能の正常化
ビタミンB12が不足(欠乏)するとどうなる?
ビタミンB12は動物の体内では合成されないため、食事から摂取する必要があります。
また、植物中のビタミンB12は微量なため、野菜中心のドッグフードはビタミンB12の不足を招く可能性があります。
ビタミンB12が不足してしまうと、どのようなことが犬の体に起こるのでしょうか?
(遺伝的にビタミンB12の吸収不良を示す代謝障害をもち、ビタミンB12欠乏を生じるジャイアント・シュナウザーが見つかっています。)
- 悪性貧血
- 神経障害
- 成長抑制
- 食欲不振
- 二次的な葉酸欠乏症
ビタミンB12を過剰摂取するとどうなる?
ビタミンB12を過剰摂取した場合に起こる問題はありません。
- なし
コリン ※ビタミン様物質
コリンは、肝臓でアミノ酸から作られる栄養素です。
厳密にはビタミンの定義とは異なりますが、ビタミンの働きに類似した作用を持つ物質としてビタミンと区別して「ビタミン様物質」と呼ばれます。
コリンは肝臓で合成することができ、人間の場合は摂取の必要はありませんが、イヌの場合は需要が供給を上回ってしまう場合があるため、食事から摂取する必要があります。
コリンは生体膜の構成成分となり、脂質の代謝にも深く関わっています。
また、神経伝達物質のセチルコリンや、神経組織を構成するレシチンの材料(前駆体)になります。
コリンは、レシチンとして食餌中に多く存在し、ドッグフードでは、卵黄、ミルク、魚、胚芽、豆類、肝臓、魚粉などに含まれています。
AAFCO栄養基準
幼犬 | 成犬 |
---|---|
1,360 mg/kg以上 |
1,360 mg/kg以上 |
※AAFCO(アフコ)は「米国飼料検査官協会」のことで、AAFCOで定められた栄養基準は日本におけるドッグフードでも利用されています。上記基準値は2015年改訂版を使用しています。
※乾物量(DM)にて記載しているため、水分を含む場合の分析値より数値が高くなっています。
NRC推奨量
幼犬(離乳後) | 成犬 | 妊娠後期・授乳期 | |||
---|---|---|---|---|---|
推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 | 推奨量 | 上限値 |
425mg | – | 425mg | – | 425mg | – |
※NRCは「米国国家研究協議会」のことで、AAFCOの基準ができるまではNRCが定めた犬猫の栄養基準が唯一の基準でした。上記基準値は2006年改訂版を使用しています。
※代謝エネルギー1,000kcal当たりの量で表記されています。
犬におけるコリンの機能とは?
- 脂質代謝に関与
- 抗脂肪肝作用
- 神経組織
- 正常肝機能
- 生体膜成分
コリンが不足(欠乏)するとどうなる?
コリンは、葉酸やビタミンB12と協力して必須アミノ酸であるメチオニンからコリンを合成することができますが、犬の場合は常に足りているわけではないため、食事から摂取する必要があります。
コリンが足りなくなってしまうとどういったことが起こるのでしょうか?
- 脂肪肝
- 出血性腎不全
- 成長抑制
- 胸腺委縮症
- 体重減少
- 嘔吐
コリンを過剰摂取するとどうなる?
犬がコリンを過剰摂取した場合、中毒症を起こす場合があります。要求量の3倍程度のコリンを摂取すると赤血球数が減少することがわかっています。
- 赤血球数の減少
- 持続性下痢
以上、犬の体に必要なビタミンについて解説をしてきました。
ずらっと見るととても難しいように感じますが、ビタミンだけでなく様々な栄養素は相互に力を合わせながら健康な体作りに役立っています。
栄養バランスの整った食事がとても大切だということがわかると思います。
疾病などがあり、抗生物質を服用しているなどの場合、不足してしまうビタミンもあります。
生活スタイルや状況によって、必要な栄養はそれぞれ異なりますが、健康な犬の場合、総合栄養食のドッグフードを与えてさえいれば難しいことを考えなくても栄養バランスの整った食事を与えられる利点があります。
上記に必要要求量などを記載してきましたが、こういった数字と格闘する必要がないのは非常にありがたいですよね。
こういった細かい栄養素についての含有量はパッケージに書ききれないこともあり、通常公表されていません。
公表はされていませんが、日本国内において「総合栄養食」と表示できるのはこれまでに書いてきたAAFCOの栄養基準を満たしているドッグフードのみですので、総合栄養食であれば栄養面では安心して与えることができます。