ドッグフードのパッケージに表示されている「保証分析値」。
保証分析値を見てドッグフードを選ぶ、という方はあまり多くないと思いますが、たとえば少し太ってきたかな?といった場合などのドッグフード選びに役立てることができます。
保証分析値として表示されている数値が何であるのかから、保証分析値の見方と、チェックポイントをご紹介します。
ドッグフードに表示の保証分析値(成分表示)の基本
ドッグフードのパッケージには、「保証分析値」として、タンパク質、脂質、灰分(ミネラル)、繊維、水分の5項目が表示されています。
水分以外の4項目には「粗」が付いており、パッケージ上の表示は、「粗タンパク質」「粗脂質」「粗灰分」「粗繊維」と表示されています。
「粗」と聞くと、漢字の印象からなんとなく「粗い分析値?」「ちょっと適当な分析値?」「えっ?粗末な栄養素なの?」という印象を受けてしまいますが、そういった意味ではありません。
人間用の食品の栄養成分表示には「粗」はついていませんが、表示されている成分分析値の分析方法は、人間の食品分析方法と大きな違いはありません(前処理方法の違いはあります)。
純粋な成分以外の物質も含まれた分析値であるため、「粗」が付いています。
このあたりの説明はペットフード取引協議会のページの説明がわかりやすいかと思います。
四成分に「粗」とついているのは、おおまかな数値を示したものではなく、栄養成分の表示についての分析上の精度を示したものです。食品でもペットフードでもたんぱく質や脂肪等の分析方法はほぼ同じですが、食品の栄養成分の表示は「粗」を表示することなく示され、ペットフードは栄養成分を保証するという観点から分析上の保証精度を「粗」で示しています。食品及びペットフードにおいて、これら五成分から水分を除く四成分は、純粋な成分すなわち純粋なたんぱく質・脂肪・繊維・灰分を測定しているのではなく、同時に他の成分も測定してしています。例えばたんぱく質の分析ではアミノ酸やアミン類、脂肪の分析では脂肪に溶解しているビタミンや他の成分、繊維では酸やアルカリに溶けないケラチンのようなものを「粗」という言葉で表現しています。また、灰分の分析はペットフードを燃やして灰にし、その量を測定します。そこには純粋なミネラルの他にその酸化物を含んでいるので他の成分と同様に「粗」を冠しています。しかし、英語では灰をそのまま測定しているという考え方なので「crude」という言葉を冠せず「ash」とのみ表示しています。「粗」や「以上」、「以下」の表示は、日本独自のものではなく世界的に共通の表現方法で、英語では「crude」(天然のまま、そのままの意)で示されています。「以上」、「以下」の表示も「max.」、「min.」の表示で示されています。
ペットフードに含まれている栄養成分の含有量を保証する事柄として、包装容器にこの様な表示方法をしており、一定の栄養成分を保証している事が示されています。出典:ペットフードと食品の違い
純粋な成分以外の物質とは?
- 粗タンパク質
- 純粋なタンパク質以外にアミノ酸やアミン類も同時測定される
- 粗脂肪
- 脂肪のほかに、脂肪に溶解しているビタミンや他の成分も測定される
- 粗繊維
- 酸とアルカリで煮て、不溶残渣(ふようざんさ)を測定するためケラチン等も測定される
- 粗灰分
- 燃やして灰になった部分を測定してるので、ミネラルやその酸化物を含んでいる
消費者にとっては少しわかりにくい印象は否めません。
ペットフード業界によってもう少しわかりやすい表示をするための検討が現在行われています。
含有量が保証値で表示されている
そのため、「この表示値は目安です」「推定値」といった表現が成分表示の近くに表示されている場合があります。
ドッグフードの場合、「保証値」として表示されており、「粗タンパク質」「粗脂質」については、犬に必要な栄養成分の基準を定めるAAFCO(米国飼料検査官協会)の最低許容量を保証するという意味で、「○%以上」という表示がされており、「粗繊維」「粗灰分」「水分」については「○%以下」の表示がされています。
粗タンパク質 | %以上 |
---|---|
粗脂肪 | |
粗灰分 | %以下 |
粗繊維 | |
水分 |
成分表示で参考とできるのは、
「少し太り気味だから、吸収率の高い脂肪分の低いフードを探してみよう」
「最近あまり食べてくれないから嗜好性の高い脂肪分の高いフードを探してみよう」
といった程度のものではありますが、良質なフードの含有量がどの程度であるかだけでも見られるようになるとドッグフード選びが少しわかりやすくなると思います。
それぞれの成分について、大体の見方などをご紹介したいと思います。
保証分析値(成分表示)のそれぞれの見かたと目安となる含有量は?
成分表示は、保証分析値として「粗たん白質」「粗脂肪」「粗繊維」「粗灰分」「水分」の5項目が最低限表示されています。
これに加えて、メーカーによっては特別に含有量を記載している成分などもあります。
「粗たん白質」「粗脂肪」については、%以上、「粗繊維」「粗灰分」「水分」については、%以下、という表示になっています。
残念ながらこの数値だけでドッグフードが安全かどうか、という判断はつきませんが、
「少し太り気味だから、吸収率の高い脂肪分の低いフードを探してみよう」
「最近あまり食べてくれないから嗜好性の高い脂肪分の高いフードを探してみよう」
「獣医さんに脂質の少ないフードを与えるようにと指導されちゃった」
なんて言う時にその成分が平均より高いのか低いのかを判断する知識を持っていると、たくさんあるドッグフードの中から多少の絞り込みができるようになります。
ただし、注意が必要なのは、「保証分析値」は含有量の目安にはできますが、その内容や品質まではわかりません。
例えば、タンパク質ひとつとっても、動物性タンパク質ではなく、植物性タンパク質の含有量が多ければ、タンパク質の数値としては高くなります。
犬にとって、高品質なドッグフードは動物性タンパク質が主原材料となることが好ましいので、単にタンパク質の含有量が多いから良いという訳ではないのです。
ですので、保証分析値は、あくまでも目安として見るようにしましょう。
できることなら、原材料と合わせて見られるようになると、大切な愛犬のドッグフード選びがさらに楽になります。
それでもなお、良質なフードを見極めるために、それぞれ目安となるパーセンテージがあります。
日本で販売されている栄養基準(AAFCO栄養基準)で定められた含有量(乾物量)と、私たちが目安とするパッケージに表示されている含有量の表示数値(水分を含む量)が異なるためそれぞれを見ていきます。
乾物量は、フードに含まれる水分を除いた時の含有量です。
例えば、ドライドッグフードに10%の水分が含まれていたとして、パッケージに表示の水分を除いていないフードに含まれる粗タンパク質の含有量が25%とした場合を見てみます。
『粗タンパク質は100gに25%含まれている=粗タンパク質は25g含まれている』
ということになります。
この、100g中には水分も含みますので、乾物量を知りたい場合は水分を除いて計算してあげる必要があります。
よって、25%÷(100-10)×100=27.8
となり、この場合の乾物量は27.8%となります。
この乾物量(DM)とパッケージに記載の数値の違いを知っておくと、「あれ?基準値より少ないぞ!!」という勘違いが無くなります。
ペッケージに表示される水分を含んでいる場合の含有量は乾物量(DM)に比べて数値が低くなります。
粗たん白質
成長期 | 維持期 |
---|---|
22.5%(DM) | 18%(DM) |
成長期 | 維持期 |
---|---|
27%前後 | 23%前後 |
上記の表Aは、左側がAAFCO(米国飼料検査官協会)で設定されたタンパク質の最低要求量です。
上記数値は、「DM値」と言って、フードの水分を除いた「乾物量」で定められていて、パッケージの表示、特別記載がない限りは水分を含んだ表示になっています。
ドライフードの場合は、含まれる水分が10%以下なので、仮に10%だった場合、上記のDM値から逆算すると、最低要求量では成長期で20.5%、維持期で16.4%です。
あくまでも上記AAFCO(米国飼料検査官協会)で設定されている値は、最低要求量であるため、良質なドッグフードを見る場合は、成長期用で27%前後、維持期で23%前後が目安となる(表B)と言われています。
尚、タンパク質の総量としてのAAFCOの栄養基準は、表Aのとおりですが、犬に必要な必須アミノ酸10種について、それぞれ栄養基準があります。
それぞれの基準や詳細をまとめていますので、下記記事をご参考ください。
犬に必要な栄養素 タンパク質
チェックポイント
原材料欄と併せて見て、動物性タンパク質が上から2番目までに表示されているものがオススメです
粗脂質
成長期 | 維持期 |
---|---|
8.5%(DM) | 5.5%(DM) |
成長期 | 維持期 |
---|---|
18%前後 | 15%前後 |
上記の表Aは、AAFCO(米国飼料検査官協会)で設定された脂質の最低要求量(水分を含まない乾物量(DM値))です。
タンパク質の時と同様、10%の水分を含んだとした場合の量に逆算してみると、最低要求量では成長期で7.7%、維持期で5%です。
AACFOの設定値は、最低要求量であるため、良質なドッグフードを見る場合は、成長期用で18%前後、維持期で15%前後が目安となる(表B)と言われています。
尚、脂質の総量としてのAAFCOの栄養基準は、表Aのとおりですが、この中に、さらに必須脂肪酸のリノール酸の含有基準値があります。
基準や栄養素としての脂質の詳細をまとめていますので、下記記事をご参考ください。
犬に必要な栄養素 タンパク質
チェックポイント
脂肪が吸収率が高いため総エネルギーが同じでも脂肪からのエネルギーが多い場合は太りやすくなります。肥満傾向にある場合は脂肪分の数値をチェックしてみましょう
粗灰分
成長期 | 維持期 |
---|---|
基準なし |
成長期 | 維持期 |
---|---|
7%前後 |
粗灰分は、ミネラル成分を燃やした灰からその含有率を測定しています。そのため「灰分」という名前になっています。
ペットフードの中のマグネシウムの含有量の指標となります。
マグネシウムを多く含むドッグフードを食べていて、水分の摂取量が少ない犬がストルバイト尿石症(尿路結石)を患うことが多いことから、粗灰分の量を見て、予防や再発防止に役立てることができます。
AAFCO(米国飼料検査官協会)では灰分の表示義務がなく、栄養基準として設定されていません。
なお、各種ミネラルについては、含有量の基準値があります。
AAFCO栄養基準の各種ミネラル含有量の基準値については、下記記事にまとめてあります。
犬に必要な栄養素 ミネラル
良質なドッグフードを見る場合は、7%前後が目安となる(表B)と言われています。
チェックポイント
尿石症(尿路結石)を患ったことがある場合は粗灰分の高いドッグフードは避けましょう
粗繊維
成長期 | 維持期 |
---|---|
基準なし |
成長期 | 維持期 |
---|---|
3〜5%前後 |
食物繊維には、水溶性食物繊維と、不溶性食物繊維があります。
分析する際に、水溶性食物繊維が測定できないため、実際にはパッケージに表示されている粗繊維の含有量より、多いとされています。
そのため、表示されている粗繊維は不溶性食物繊維であるセルロースの含有量と考えることができます。
セルロースは消化されないため、栄養素としては体内で利用されませんが、肥満や便秘などに役立つとされています。
例えば肥満の場合は、セルロースが水を吸って膨らむ特性を利用して、低カロリーでありながら、容積を増加させて満腹感を与えてダイエットに役立てるといった使い方がされます。
良質なドッグフードを見る場合は、3〜5%前後が目安となる(表B)と言われています。
チェックポイント
粗繊維の含有率が必要以上に高いと、栄養価が低く、またタンパク質やカルシウムなどの吸収率が低下します
粗繊維はエネルギーとして役立たないから不要とされてきましたが、上記のように食物繊維の役割の判明とともに有効に活用される場面が増えてきました
保証分析値だけで、そのドッグフードの品質までを見ることはできません。
ですが、保証分析値と原材料を併せて見ることで、そのフードのバランスや、パッケージ書かれている特徴の根拠が見えてくるようになります。
今食べているドッグフードのパッケージに書かれている保証分析値を見て、タンパク質はどれくらいなのか、脂質は?とぜひチェックしてみてください。