日本で販売されているドッグフードは、ペットフード安全法(愛がん動物用資料の安全性確保に関する法律)にて安全性の確保が図られています。
ペットフード安全法では、「規格」によって添加物や農薬など、ペットフードに含まれる成分について含有量の基準値が設定されています。
ここでは、その設定されている成分について見ていきたいと思います。
なお、ペットフード安全法によってドッグフードの安全性がどのように守られているのかなど、ペットフード安全法の決まりや、違反した場合の罰則などについては、別の記事にてご紹介していますので、ぜひご覧ください。
ペットフード安全法における成分規格 一覧
※平成27年2月20日追加分まで
環境省発表の、ペットフード安全法における成分規格の一覧です。
これらの一覧がドッグフード選びにどのように利用できるのでしょうか?
後ほど、解説をしてみたいと思います。
まずは一覧をざっとご覧ください。
分類 | 物質等 | 定める量(μg/g) |
---|---|---|
添加物 | エトキシキン・BHA・BHT | 150(合計量) 犬用にあたっては、エトキシキン75以下 |
亜硝酸ナトリウム | 100 | |
農薬 | グリホサート | 15 |
クロルピリホスメチル | 10 | |
ピリミホスメチル | 2 | |
マラチオン | 10 | |
メタミドホス | 0.2 | |
汚染物質※ | アフラトキシンB1 | 0.02 |
デオキシニバレノール | 2(犬用) 1(猫用) |
|
カドミウム | 1 | |
鉛 | 3 | |
砒素 | 15 | |
BHC (α-BHC、β-BHC、γ-BHC及びδ-BHC、の総和をいう。) |
0.01 | |
DDT (DDD及びDDEを含む。) |
0.1 | |
アルドリン及びディルドリン (総和をいう。) |
0.01 | |
エンドリン | 0.01 | |
ヘプタクロル及びヘプタクロルエポキシド (総和をいう。) |
0.01 | |
その他 | メラミン | 2.5 |
※汚染物質:環境中に存する物質であって、意図せず愛玩動物用飼料中に含まれるものをいう。
※規定する成分の販売用ペットフードにおける含有量を算出するにあたっては、そのペットフードの水分含有量を10%に設定する。
成分規格一覧をドッグフード選びに利用できる?
法律で上限値が設定されている、一覧でご紹介した成分ですが、私たち飼い主が、ドッグフードを選ぶ際に、それらの成分が含有されているかどうかを調べる方法はあるのでしょうか?
残念ながら、「添加物」として記載されているもの以外の「農薬」「汚染物質」「メラミン」などは、ドッグフードメーカーが試験結果を公表している場合を除き、含有値を知ることは難しいでしょう。
ペットフード安全法では、添加物は表示義務がありますが、加工助剤と言って、原材料に含まれるもので微量なものなどについては記載しなくても良いことになっています。これは人間用の食品でも同様で、いわゆる、キャリーオーバーというもので、メーカーによって公表されていない限りは消費者にそれを知る術はありません。
「農薬」「汚染物質」「メラミン」などについては、同じくペットフード安全法で定められている、抜き打ちの製造業者・輸入業者・販売業者への立ち入り調査によって、全項目ではなく特定項目とはなり、物足りない感じは否めませんが、検査が行われており、違反している場合などは公表され、下記ページに一覧で掲載されるようになっています。
【参考】独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)立入検査に係る試験結果の公表
添加物に関しては、ペットフード安全法において、使用した添加物もパッケージに記載しなければいけない決まりになっているため、その成分の含有量まではわからなくても、「含有されているかどうか」「その添加物が使用されているかどうか」は知ることができます。
成分規格で上限値が決められている添加物、「エトキシキン」「BHA」「BHT」「亜硝酸ナトリウム」は、ドッグフードでは比較的ポピュラーな添加物として存在しています。
それでも昨今、避けられる傾向にあり、これらの添加物が使用されているドッグフードについては、あらゆるところで評価が低くなっています。
これらの添加がどのような目的で使用されているのかを見てみましょう。
成分規格で上限値が設定されている「エトキシキン」「BHA」「BHT」「亜硝酸ナトリウム」とは?
ペットフード安全法の成分規格で上限値が決められている、添加物である「エトキシキン」「BHA」「BHT」「亜硝酸ナトリウム」については、ドッグフードのパッケージから確認することができます。
添加物の目的としては、酸化防止剤として、保存料として、着色料や発色剤など、その目的は様々です。
上記成分規格で上限値が決められている、4つの成分の目的などを見ていきます。
エトキシキン
エトキシキンは、酸化防止剤として添加されます。
エトキシキンは海外において抗酸化剤や殺菌剤として使用されている薬剤で、発がん性が疑われている添加物です。
日本では毒性が強いため人間用の食品で使うことは禁じられています。
日本国内では使用許可のない薬剤で、人間の食材への許容残留量の基準値は0.05ppm〜7ppm程度に設定されています。
【参考】厚生省行政情報 食品、添加物等の規格基準 エトキシキンについて、食品中の残留基準
ppmをmgになおすと、100万分の1ですので、0.05mg〜7mg/kgとなります。
ドッグフードの上限値は、エトキシキン単体で、75μg/gです。
単位が「μg/g」になっているので人間用の基準値をあわせるために、これをmgになおすと、75mg/kgになります。
人間用に比べて、非常に高くなっているのがわかるかと思います。
エトキシキンはドッグフード選びの時に避けた方が良いので、エトキシキンが使用されていないドッグフードを選ぶようにしましょう。
主に輸入飼料やペットフード中の残留には注意が必要です。
日本の法律では、エトキシキン、BHA、BHTの合計量で150mg/kg以下、ドッグフードの場合はエトキシキン単独で75mg/kgと基準値が決められていますが、アメリカ、欧州ではその基準値が異なります。
日本
エトキシキン、BHA、BHT合計量150mg/kg以下
ドッグフードの場合エトキシキン単独75mg/kg以下
アメリカ
エトキシキン、BHA、BHT合計量200mg/kg以下
エトキシキン単独150mg/kg以下
※FDAはドッグフードで75mg/kgを推奨
欧州
エトキシキン、BHA、BHT単独または合計量150mg/kg以下
ドッグフードの場合エトキシキン単独100mg/kg以下
こうしてみると、人間の基準値と比べると「大丈夫なのか??」と心配になりますが、アメリカ、欧州に比べると、上限値が厳しくなっていることがわかるかと思います。
現在では添加されることはほとんどなくなりましたが、添加物としてエトキシキンが使用されているドッグフードは避けるようにしましょう。
BHA(ブチルヒドロキシアニソール)・BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)
BHA、BHTは、酸化防止剤として添加されます。
BHTは、アメリカでは乳幼児用食品への使用が禁止されており、現在では添加されることはほとんどなくなりましたが、ドッグフードではまれに使用されている製品があります。
BHTに変わるものとして、BHAが使用されるようになりましたが、BHAは発がん性が疑われている添加物でもあります。
厚生労働省が定める人間用の食品添加物の基準値は下記のとおりです。
BHA、BHTの使用基準(人間用食品)
魚介類冷凍品(生食用冷凍鮮魚介類及び生食用冷凍かきを除く) 及び鯨冷凍品(生食用冷凍鯨肉を除く)の浸漬液 |
1000mg/kg (BHA・BHT併用の場合は合計量) |
チューインガム | 750mg/kg |
油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごしいも | 200mg/kg (BHA・BHT併用の場合は合計量) |
上記人間用の基準値は残存量ではなく使用量になるため、単純に比較はできませんが、
ペットフード安全法では、ペットフードの含有量として「エトキシキン、BHA、BHTの合計量で150mg/kg以下、ドッグフードの場合はエトキシキン単独で75mg/kg」と基準値が決められています。
障害食べ続けても健康に問題が発生しない量として、基準は決められていますが、「体に悪いかもしれない」と言われているものをわざわざ選ぶ必要はありません。
エトキシキン同様に、BHAが使用されているドッグフードは避けるようにしましょう。
亜硝酸ナトリウム
亜硝酸ナトリウムは主に、発色剤として使用される添加物です。
ペットフード安全法施行当初はな亜硝酸ナトリウムは成分規格にはありませんでしたが、2015年(平成27年2月20日)にメラミンと同時に追加されました。
亜硝酸ナトリウムは人間の食べ物であれば、ハムやソーセージなどの加工食品が、黒ずんだりするのを防ぐための発色剤として多く使用されていています。
ハムやソーセージが体に悪い・・・と言われる所以はこういった添加物が危険とされるからなんですね。
亜硝酸ナトリウムには発がん性の疑いがあり、食品添加物の中でも毒性が強いものとして、これまでご紹介した添加物と同じく、人間用では厚生労働省が使用量を制限しています。
亜硝酸ナトリウムの使用基準(人間用食品)
食肉製品/鯨肉ベーコン/魚肉ソーセージ | 70mg/kg |
魚肉ハム | 50mg/kg |
いくら/すじこ/たらこ | 5mg/kg |
これに比べて、ドッグフードでは、
100mg/kg
が基準値です。
人間用の基準と比べると多少高い数値になっています。
亜硝酸ナトリウムも、添加されていないドッグフードを選ぶようにしましょう。